異常が通常になったこの自然環境で“水”を考えるせっけん講演会「みずのほし、みずのはなし」レポート

エコ日記

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藤沢市せっけん推進協議会主催の講演会「みずのほし、みずのはなし」が6月1日、藤沢市役所で開催されました。

師に、“水のジャーナリスト”の橋本淳司さん(アクアスフィア代表)を招き、世界や日本の水問題、そして解決策についてのお話がありました。主催の藤沢市せっけん推進協議会は、発足33年の歴史ある市民団体。藤沢市を中心に、せっけんの安全性、そして合成洗剤の問題点などをテーマに、学校への環境教育、川の水質調査、学習会や講座、講演会の開催など精力的に活動している協議会です。

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●世界の水の問題‐温暖化はしてしまっている

今回の講演会の講師、“水のジャーナリスト”の橋本淳司さんは日本国内、世界各地の「水」を取材し、水をテーマにしたルポルタージュ、エッセイなど多数執筆。「水の授業」を大学や小学校などの教育機関、また全国で講演会を展開している方です。

世界の多くの国で水が不足している事態が起きています。また、「水を使うということは、水を汚すこと」世界の水事情を話す橋本さんから、始めにそんな言葉が出てきました。発展途上国では、水を浄化する設備がないため、汚水を飲んでしまい子どもたちが病気になっているそうです。また、昨今の温暖化現象によって、山中の氷が解けていることも大きな水問題の一つ。氷であることで山に水分が留まって一年を通じて下流へ流れていたものが、降雪してできた氷がすぐに溶けてしまうので、夏や春に水不足になる場所が世界各地で起きているそうです。「温暖化はもうしてしまっている。その中でどう暮らすか考えなければならない」と続ける橋本さん。「異常気象は、もう異常ではなく、この状態が通常と思わなければならない」と話していました。

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●日本の水の問題‐地下水の減少

世界の水問題の後は、日本の水問題について。

初めに、「水源の荒廃と売買」というテーマでは、放置された人工林、酸性雨などによって白骨化した森林、こういった環境問題によって山が荒廃し、“豊かな森”がなくなり、川の水量が減っていることの説明がありました。

2つ目のテーマ「地下水の利用ルールがない」では、地下水に所有権はなく、地上の土地を購入するとセットでついてくること、また、水道水は厚生労働省、下水や川は国土交通省、トイレにたまった水は環境省と、水を取り巻く行政組織が部分部分で違うことや、そもそも地下水を管轄する機関がない問題点などをあげていました。また、企業による地下水利用の増加、既存のボトルメーカーの増産、新規の水メーカーの参入(宅配水)、水田の減少(水田を利用すると地下水が増える)などによって、地下水が減っていることも問題だそうです。他には、「海外への水依存」が進んでいること。これは、輸入食品を考えるとき、その食品、食材を作るのにあたって多くの水を使用することから、間接的に海外の水を多く使ってしまっているそうです。飼料のため多くを輸入しているトウモロコシは、1本作るのに、バケツ9杯分の水を使用するそうです。

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●解決策‐FEWから考えるFUTURE

水を取り巻く世界、日本の現状の説明の最後には、こうした問題点を解くべくお話がありました。

それがFood(食)、Forest(森)、Energy(エネルギー)、Water(水)の頭文字FEW(ほんのわずか)から考えるFUTURE(未来)。限りある資源の中、そして温暖化した現代の中で、考える未来は、FとE、EとW、WとFそれぞれの関係性を一つ一つ見ることから始まると橋本さんは説明していました。例えば、W(水)とE(エネルギー)の関係では、ポンプ導水を短くすることによって、導水で消費するエネルギーコストを減少させること。例えば、F(食)とW(水)の関係では、上記でもお話があったように水田を増やすことによって地下水が増やせること。水田が増えれば食料自給率が上がり(もちろん、もっと米を食べる社会にならなければだが)、海外の水を使った食品の輸入を抑えることができる。「食、森、エネルギー、水のそれぞれの関係を一つ一つ皆さんも考えてみてください」と橋本さんから最後にメッセージがありました。

このレポートではお伝えできませんでしたが、ユーモア溢れる説明で、とても分かりやすく楽しい講演会となっていました。是非、橋本さんの他の講演会に機会があったら足を運んでみて欲しいです。 変化したこの地球で、私たちは、とても身近で、そして、なくてはならない“水”のことをもっと知らなければならない、そして行動していかなければならないと考えさせられる一日となりました。 橋本さんのホームページには、他にもたくさんの水に関する情報が掲載されているそうです。皆さんも是非ご覧になってみてください。私たちの知らない“水”の現実がたくさん載っていますよ。⇒アクアスフィア橋本淳司事務所

●藤沢市の“せっけん”事情

今回の講演会を開いた藤沢市せっけん推進協議会は、1981年「藤沢市洗剤対策協議会」として発足し、その後「藤沢市石けん推進協議会」、現在の「藤沢市せっけん推進協議会」となって精力的に活動を継続させている市民団体です。

同協議会の活動により、藤沢市の全学校給食施設では、調理機器や床の洗浄に1986年より“せっけん”が使用されています。その他、引地川、境川などの合成界面活性剤の濃度の調査なども行っています。「いのちを守るため、自然を守るため、せっけんの良さを皆さんに知ってもらいたい」と同協議会会長の手塚さんは話していました。

 

関連リンク: アクアスフィア橋本淳司事務所

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