藤沢で麦踏みが伝えるもの

エコ日記

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「ちゃんと踏まなきゃたくさんとれないんだよ!」「こんな踏み方考えたよ!」よく晴れた空のもと、冬の畑に子どもたちの声が飛び交います。

立春をひかえたこの日、御所見地区の畑で麦踏みが行われました。麦踏みをしたのは、中里小学校の3年生約40名。藤沢で小麦づくりをすすめる「さがみ地粉の会」のみなさんの指導のもと、この地ならではの体験からいくつかのことを学びました。

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“麦踏み”とは、地面から顔を出して少したった麦の芽を、文字通り足で体重をかけて踏んでいく行為です。晩秋に蒔かれた種が発芽し、根を張り始める頃はちょうど大寒の頃。連日のように霜柱が立つ畑では土が持ち上がり、背丈もそれほど高くない若い麦は根ごと浮き上がってしまいます。これをもう一度しっかり地面に戻してやることと、同時に上から圧力をかけることで、茎が太くなり分枝を多く出し、収穫量を増やすために行われるものです。

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子どもたちに説明するのは、さがみ地粉の会代表の田代幸久さん。普通は畑に入って作物を踏んだら怒られるけれど、今日だけは踏んでいいよと話し、「しっかり踏んで、麦が仲間を増やして、たくさんとれるようにしてください。」と呼びかけて小学生たちを畑に送り出します。

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じっくり踏めるようにと2人1組で肩を組んだり、隙間なく踏んでいるかと足元に目をやりながら、平均台を歩くように注意深く歩んで行く子どもたち。カラフルな運動靴が麦の上をじわじわと進んで行きます。ちょっと早足に抜けて行ったクラスメートを呼びとめ、きちんと踏まないとたくさん収穫できない!と叱る女の子、上手に踏めているかと先生に聞きながらゆっくり踏んで行く子、黙って足元だけを見ながら手を取り合って移動していく男の子と女の子、いずれも麦踏みの効果をしっかり出そうと一生懸命取り組んでいるのがわかります。

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中里小学校前の畑は比較的広く、1コマの授業時間ですべて踏みきれないのでは…という大人の心配をよそに、畑の麦はすっかり子どもたちの足跡にカバーされました。やがてこの麦が立ち上がり、育ち穂をつけ、給食のナンやパンなどいろいろに加工されることが説明され、子どもたちの目が輝きを増します。「オレたちが踏んだ麦だ!」と言いながらパンをほおばる日は、きっと待ち遠しいはずです。

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田代さんは続けて、金色に実った麦の穂が風に揺れ、畑の向こうに広がる丹沢や富士山とのコントラストが素晴らしいだろうという話や、麦畑から空に舞い上がるヒバリの姿が楽しみだという話もされました。子どもたちにどれくらいその景色がイメージできたか、このときはわかりません。でも、小学生が大人になる頃には、なつかしい当たり前の光景として、さらに次の世代へ受け継ごうとするものになっているかもしれません。「さがみ地粉の会」のみなさんが小麦づくりを通じて伝えたいのは、地元の食料そのものだけでなく、生産にまつわる風景や知恵、文化など、今失われかけている多くのものごとなのです。

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