植物遷移の大実験場“大庭遊水地” -引地川親水公園はワンダーランド

エコ日記

引地川親水公園“大庭遊水地”近況

大庭遊水地は平成6年度(1994年度)に引地川の洪水防止を目的に整備されました。面積は11.5ha、洪水貯留量284,000㎥です。整備に伴い、引地川沿いの6.9haが自然保全ゾーンとなりました。

遊水地の計画当時、計画地周辺では地元の大庭中学校科学部が野鳥の観察と調査を行っていましたが、彼らの活動が自然保全ゾーン誕生のきっかけのひとつになりました。 現在、大庭遊水地は引地川親水公園の一部に組み込まれています。

引地川親水公園の水辺で見られるタコノアシ 

今から15年前、完成直後の大庭遊水地は建設機械で地面を削り取ったままの状態でした。むき出しの土の上を歩いていると突然ズブリとひざ上まで沈む場所もありました。 その後、カヤツリグサ科の植物をはじめ、タコノアシ、ガマ、コガマ、ヒメガマなどの湿生植物が生え始めました。さらに、やや乾燥した場所にはヨシやオギなども見られるようになり、4~5年後にはヤナギ類が見られるようになりました。 遊水地内には大雨のたびに上流からの土砂が流入し堆積するため湿地は乾燥化に向かいます。 川の水が越流堤を越え湖状態となった大庭遊水地 神奈川県では遊水地の治水機能を維持するために、湿地に堆積した土砂の浚渫を数年に一度行っていますが、近年では湿地の乾燥化に追いつかない状況にあります。 県では大庭遊水地・自然保全ゾーンにおいて、治水上問題がない限り、在来種が自然発生していくことを管理の方針としています。このため、大庭遊水地で見られる植物相の遷移はとてもダイナミックなものとなっています。

大庭遊水地は大規模な遷移の実験場と見ることもできます。 オギ原を覆う特定外来生物・アレチウリ 大庭遊水地は植物の遷移の過程で、新たに表れる種、消えていく種などが観察でき、非常に興味深い場所です。一方で、外来植物の侵入にも注目すべきものがあります。初期にはセイタカアワダチソウやブタクサなどが多く見られました。その後、オオブタクサやワルナスビが自生する範囲を広げ、現在では特定外来生物指定種のアレチウリが侵入しオギなどの背の高い植物を覆い始めています。 今後、これらの外来種を防除する体制を整え、対応していく必要があります。 大庭遊水地の水中で冬眠していたウシガエル 外来種問題は植物だけではありません。大庭遊水地周辺には多くの動物種が生息しています。 アメリカザリガニ、ミシシッピイアカミミガメのほかに、特定外来種であるカミツキガメ、ウシガエル、オオクチバス、ブルーギル、カダヤシが生息し、ほとんどの種が繁殖していると思われます。 2000年には孵化したばかりのカミツキガメが複数個体発見され、大庭遊水地内での繁殖と定着化が懸念されています。

今年9月に大庭遊水地で確認された小亀 

今年9月、ザリガニ釣りに訪れていた親子が見慣れない小亀を釣り上げちょっとした騒ぎになりました。藤沢市の担当課にカミツキガメの子ではないかとの問い合わせが2件入りました。担当職員が出向いたところ、2例とも在来種ニホンシシガメの小亀であることが確認され事なきを得ました。 余談ですが、小亀を捕獲されたのはどちらも茅ヶ崎市から遊びに来られた親子づれでした。担当職員が大庭には良く来られるのですか?とたずねたところ「茅ヶ崎には大庭遊水地のように男の子が満足できるような公園がないのです。」との答えが返ってきたとのことです。 なるほど!

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