
前編では、プレス工業株式会社の環境対策の組織体制とカーボンニュートラル達成に向けた6つの視点を紹介しました(創業100年、プレス工業に学ぶカーボンニュートラル【前編】|組織づくりと6つの視点)。後編では、さらに一歩踏み込んで、プレス工業藤沢工場の具体的な事例を解説します。
環境啓発の総合窓口

プレス工業公式HP https://www.presskogyo.co.jp/sustainability/environment/climate_change/
プレス工業藤沢工場の環境対策は、事務課の鷹野清勝さん、山田翔太さん、中田鮮さんの3人が事務局として対応しています。この事務局には、現場から数々の相談が舞い込みます。「『CO₂削減目標達成のために、どんな省エネ設備を導入すれば良いか?』『生産量を維持しながら、どのように電力消費量を削減すれば良いか?』といった相談には苦労することが多いです」と語るのは、プレス工業藤沢工場事務課の中田鮮さんです。

「私は技術系出身ですので、各持ち場の設備状況や実情をよく理解しているつもりです。そんな中でも、設備更新では、なるべく省エネを意識した機械を導入するなど、各課と連携を取りながら対応しています」と対応を口にします。この時、キーとなるのは、前編で触れた「6つの視点(かえる、さげる、ひろう、やめる、なおす、とめる)」です。
設備刷新時に環境への影響を提言

プレス工業藤沢工場では2024年度には、圧縮した空気の圧力を活用して削り出しや加工などを行うコンプレッサーを更新しました。
環境事務局は設備の導入を担当する設備課から提案された内容を一つ一つ精査しました。最終的に導入されたコンプレッサーによって、従来の設備よりも年間で約250,000kWhの電力消費量の削減に成功しました。これは6つの視点の「かえる」に相当します。
無駄を見直す「エア・ガス漏れパトロール」

工場内の「エア・ガス漏れパトロール」も重要な取り組みの一つです。空気を送り出すホースなどに微細な穴が空いていると、その穴からエア漏れが発生し、必要な圧力を維持するために余分にエネルギーを使わなければならなくなります。
そこで、2024年度にエア・ガス漏れを検知する特殊なカメラを導入しました。このカメラにより、エア・ガス漏れの位置を視覚的に特定できるだけでなく、漏れの程度を定量的に測定することが可能になりました。これにより、修繕の優先順位付けや修繕量の正確な算出が可能となり、効率的かつ効果的な対策を講じられるようになりました。
効果を可視化し、利益と環境啓発を両立

「エア・ガス漏れパトロールの『なおす』の視点の効果は小さくありません」と鷹野事務課長は言葉を続けます。エア・ガス漏れ修繕から得られる効果をCO₂削減量(t-CO₂)や削減効果(円)に算出することでエネルギーの無駄を可視化しています。
事務課の山田翔太さんは、「大規模な設備投資だけでなく、地道な取り組みも重要です。製造部門と保全係を中心に、エア漏れ修繕だけでなく、「非稼働時の電源オフの徹底」や「合理化活動」などを通じて無駄なエネルギーのロスを防いでいます」といいます。
プレス工業藤沢工場では、環境委員会や省エネ推進部会の活動に加え、より包括的な取り組みを展開しています。具体的には、各部署に年間CO₂削減量の目標数値を設定し、職場責任者が月次で進捗管理を行っています。また、従業員の環境意識向上を目的とした環境ニュースを年に数回発行しています。これらの施策により、工場全体で環境保全への意識を高め、継続的なCO₂排出量削減を推進しています。

今後に向けて鷹野事務課長は、「製造業では、生産量の増加に伴いCO₂排出量も増加するため、利益追求と環境保護が相反するように見られがちです。しかし、プレス工業藤沢工場では、6つの重点的な取り組みを活用しながら、利益の確保と環境への配慮の両立を目指しています」と2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、着実に歩を進めています。
話を伺った人
プレス工業株式会社 藤沢工場
〒252-0816 神奈川県藤沢市遠藤2003-1
TEL:0466-89-3500
事務課長 鷹野 清勝さん
主任 山田 翔太さん
中田 鮮さん