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創業100年、プレス工業に学ぶカーボンニュートラル【前編】|組織づくりと6つの視点


国内に5つ拠点を持ち、主にトラックのフレーム・アクスルや建設機械用キャビンなどを製造する自動車部品・建設機械部品メーカーのプレス工業株式会社(以下、プレス工業)。市内に拠点を置く同社の藤沢工場は、2023年と2024年の11月・12月の電気使用量削減率などを競う「ふじさわ省エネチャレンジ2024」で他社を圧倒する節電量を達成し、省エネ優秀事業所を受賞しました。製造業ならではの難しさを乗り越え、社員一丸となって環境対策に取り組むその秘訣について、前後編にわたり、同社事務課の鷹野清勝さん、山田翔太さん、中田鮮さんに話を伺いました。

創業100年、“自動車の背骨”を生産(藤沢工場稼働64年)
 川崎市に本社を置くプレス工業株式会社(以下、プレス工業)は1925年2月にその前身が創業し、2025年6月に創立100周年を迎える自動車部品メーカーです。プレス工業藤沢工場は1961年に藤沢市遠藤で稼働。トラックなどを製造するいすゞ自動車を主な取引先としており、自動車の背骨にも例えられる自動車の骨格部分の「フレーム・アクスル」などの生産を手掛けています。

 ふじさわ省エネチャレンジは、2023年と2024年の11月・12月分の電気使用量の削減率などを競い、市内134事業所が参加しました。取組の結果は347,079kWhの節電を達成し、約148.90t- CO₂の温室効果ガス排出量の削減効果が生まれました。 プレス工業藤沢工場は、削減率では最優秀賞を獲得したかながわ信用金庫善行支店に及ばなかったものの、150,385kWhの電力量を削減。参加した事業所の中でも1桁飛びぬけた成果を上げました。

 プレス工業藤沢工場で環境対策の事務局を務める鷹野清勝事務課長は、「設備の見直しや工場内のムダを見直したことで、生産量を確保しつつ、節電効果も得ることができました。これまでも社員一丸となって環境対策に取り組んできましたが、今回、『ふじさわ省エネチャレンジ』のような環境系のイベントに応募してみたのは初めてで、優秀賞をいただけて、これまでの努力が報われるようです」と喜びを口にします。


トップダウンとボトムアップの融合

プレス工業公式HP https://www.presskogyo.co.jp/sustainability/environment/climate_change/

 プレス工業藤沢工場は、約15万kWhの削減をどのようにして達成したのでしょうか。その秘訣は、プレス工業の組織にあります。
 まずトップダウンによる環境啓発の推進です。プレス工業では、社長方針に基づき、担当役員と各地区の工場長などで構成される「中央環境委員会」を組織しています。この委員会では、カーボンニュートラルへの貢献に向けて、明確な数値目標を定めるなどの取り組みを行っています。現在、グループ全体で掲げられている目標は、CO₂排出量が2019年度と比べて2025年度は21%削減(86,900t-CO₂)、2030年度は41%削減(64,900t-CO₂)、そして2050年度にはCO₂排出量実質ゼロとしています。

 次にボトムアップの体制が構築されています。各工場は、中央環境委員会で策定された目標数値を基に、その実現に向けて工場長が中心となって創意工夫を凝らしています。藤沢地区では、工場部門・研究開発部門・コーポレート部門など、各部門のメンバーで構成される「藤沢地区環境委員会」で方向性を確認しています。具体的活動は「省エネ推進部会」で目標に向けた活動を各職場で展開し、進捗確認・情報共有・水平展開を図っています。
 さらに、地域特性や事業内容を考慮しながら進められる各拠点の取り組みの中で、優れた事例が見られた場合、それらは中央環境委員会へボトムアップされ、他工場へ共有されます。このようなトップダウンとボトムアップの融合が、会社全体の環境活動を効果的に推進しています。

目標達成へ6つの視点

プレス工業公式HP https://www.presskogyo.co.jp/sustainability/environment/climate_change/

 CO₂削減に向けて取り入れている視点が、「かえる、さげる、ひろう、やめる、なおす、とめる」の6つです。例えば、「かえる」では、ヒートポンプ導入やフォークリフトの電動化などを指し、設備自体を「かえる」ことで、カーボンニュートラルの取り組みを推進しています。

 プレス工業藤沢工場の山田翔太さんは、「目標に向けて前倒しで削減できています。しかし、CO₂削減の取組は、継続するにつれて、設備更新など大きな削減が難しくなることも予想されます。そこで私たち藤沢工場の環境事務局は、環境に関する知識や市場動向を常に把握し、工場全体のCO₂排出量削減へのモチベーションアップ向上に努めています」と語ります。


脱炭素に向けた第一歩
 前編では、プレス工業藤沢工場の環境に関する組織体制、具体的な施策、社員のモチベーションを高める秘訣について紹介しました。後編では、具体的な事例や、他社が自社に取り入れやすいポイントについてさらに詳しく掘り下げていきます。

話を伺った人
プレス工業株式会社 藤沢工場
〒252-0816 神奈川県藤沢市遠藤2003-1
TEL:0466-89-3500
事務課長 鷹野 清勝さん
主任 山田 翔太さん 中田 鮮さん